社用車での事故は、企業にとって大きなリスクとなり得ます。車の修理代金だけではなく、被害者の方への賠償責任などを追う可能性もあります。
この記事では、社用車で事故を起こした場合の保険や負担割合について詳しく解説し、適切な対応方法についても紹介します。
従業員の方だけではなく、事業者の方向けの記事になっておりますので、ぜひご覧ください。それでは、社用車で事故を起こした場合について解説していきます。
社用車での事故とは?
社用車の事故とは、業務中に従業員が社用車を運転している際に発生する交通事故を指します。
この場合、企業は従業員や第三者への対応、車両の修理費用など、様々な責任を負うことになります。
ちなみに、マイカー通勤している場合の従業員の事故は、企業負担が0である裁判での判例もあります。このため、「社用車であれば、会社責任がある」と認識するのが良いでしょう。
社用車の事故の負担割合は?
社用車で起こってしまった事故は、基本的に、運転者だけでなく会社も責任を負うことになっています。
具体的な責任負担の割合は、一定の決まりはありません。
運転者の過失の度合いや事故の状況にもよって判断しますが、就業中なのであれば連帯責任として両者で責任を持ちます。
◇注意点
社用車が事故によって破損したという場合には、修繕費用は会社が負担することになってています。労働基準法で禁止されているためです。
>使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
>引用元:労働基準法 第16条(賠償予定の禁止)
社用車の保険の基本
社用車には、一般的に以下の保険が適用されます。
◇自賠責保険
自賠責保険は、すべての車両に加入が義務付けられている保険で、対人賠償が対象です。事故によって他人(歩行者や相手車両の乗員)に怪我を負わせた場合に適用されます。
社用車であるかどうかの有無にかかわらず、この保険が適用されます。
◇任意保険
任意保険は、自賠責保険ではカバーしきれない損害を補うために加入する保険です。以下の種類があります。
●対人賠償保険: 自賠責保険の限度額を超える対人賠償に対応。
●対物賠償保険: 相手の車両や物に対する損害をカバー。
●車両保険: 自社の車両の修理費用をカバー。
●搭乗者傷害保険: 社用車に乗っていた従業員や同乗者の怪我に対する補償。
社用車で事故を起こしたさまざまなケース
◇マイカー通勤で通勤中の事故を起こしてしまった場合
マイカー通勤での事故は、基本的には100%従業員の負担となります。
就業時間中ではないこと、さらに、車の所有者が従業員であることなどが理由です。
◇就業時間中に運転者の不注意で事故が起こってしまった場合
就業時間中の事故は、会社と使用者である従業員双方の責任です。
このため、双方で適切な責任割合を決め、100%の責任をかぶることになります。
しかし、運転者が不注意によることが明らかであるケースなどには、以下のケースもあります。
・始末書の提出
・減給処分
・会社が賠償責任を負担しない
・人事査定評価に響き今後の出世にかかわる
・代々語りづがれる失敗リスト(ミスリスト)に加筆される
場合もあるようです。しかし、車の修理費用などは労働基準法で従業員に負担させることはないようになっていますので、注意しましょう。
さらに、就業規則等に明記されていない場合は、交通事故による減給も原則はできません。
社用車の事故に関するよくある質問
◇従業員が落ち込んでしまっていないか
まじめな社員であればあるほど、従業員は落ち込みやすいです。
実際に、「教えてGoo」には『会社の車で事故した罪悪感』として、こんな書き込みがありました。
従業員としては、信用されていながら社の大事な財産に傷をつけた罪悪感もあるのでしょう。このため、事業者としてはメンタル面などへのケアも大切です。
◇賠償が給料天引きにならないかどうか
給料については、全額払いが原則となっています。(労働基準法24条1項本文)
このため、仮に従業員の手出しが発生する場合でも、差し引くことも原則としてできないとされています。
◇事故を起こしたペナルティがあるか
就業規則等に明記されていない場合は、交通事故で降格することや、減給するなどの処分を行うことはできないようになっています。
特に、降格や減給に関しては労働基準法でも理由がないとできないようになっています。
◇事故を起こしたことはバレないか
事故を起こしたとき隠蔽したくなる従業員も多いでしょう。
しかし、基本的には、すぐに報告することで保険適用となります。
このため、必ず報告は徹底するようにしましょう。「怒られるから言いたくない」という体制では不健全です。
◇事故を起こした従業員はクビになるか
事故を起こした従業員をクビにすることは不当な解雇ですので、不可能です。
社用車はリースやレンタルがおすすめ?
いくら保険が効くからといっても、自社が所有している車で事故を起こしてしまうと、自社の資産がなくなってしまうことに等しいです。
このため、社用車はリースやレンタルがおすすめです。壊したときに修理費用が発生するかどうかはリース会社の契約によりますが、仮に修理費用が自己負担だったとしても、はじめから車が自社の資産ではないので、修理費用が発生するのみにとどめることができます。
保険にさえ加入しておけば、負担額も少なく済みますのでぜひ検討してみてください。