インボイス制度とは、事業者間での取引に関する請求書の交換を電子化・標準化する制度のことです。
従来の請求書交換方法に比べ、効率的かつ精度の高い取引が可能となり、民間企業を中心に利用が急速に拡大しています。
今回は、インボイス制度の概要やメリット、さらには利用方法や注意点について解説していきます。
インボイス制度 概要
インボイス制度は、取引先への請求書や請求書に関する情報を電子データとしてやり取りする制度のことです。
具体的には、電子データの形で請求書に含まれる情報を相手方に送信し、受信後に元の請求書と同等の意義を持つ電子データを相手方から受信することができます。
インボイス制度の実施により、紙媒体での請求書の発送・受領にかかる手間や時間、誤りによるトラブルが少なくなり、作業内容が安定し取引のスピードもアップします。
また、請求書を送る側には、労力削減に加え、配送コストや印刷・郵送のコストの削減など、固定経費の節減にもつながります。
引用:国税庁ホームページ
インボイス制度はさまざまな国で導入されていますが、日本では2019年10月より、上限金額1万円以上での電子請求書の取り扱いを社内規定で認めることができるようになりました。
これに伴い、企業間取引を中心に、インボイス制度の活用が広がっています。
メリット
インボイス制度を利用することで、以下のようなメリットが期待できます。
1. エラーの軽減
紙媒体での請求書発行には、印刷・宛名シールの貼付などの手間が必要です。
そのため、誤字・脱字が発生し、相手方に誤った情報を伝えてしまうケースがあります。
しかし、インボイス制度を使えば、一度完全な形で入力された請求書情報を電子データとして送信するため、そのようなミスが軽減されるとされています。
2. スピードアップ
紙媒体での請求書発送は、印刷後、宛名シールを貼り、封筒に入れてポストに投函する必要があります。
一方、インボイス制度を使えば、電子データのやり取りによって、請求書を短時間で相手方に送信することができます。
これにより、一時的なキャッシュフローの改善が見込める上、相手企業からの請求書を受け取るまでの時間が短くなり、迅速な対応が可能になるとされています。
3. 環境負荷の削減
紙媒体での請求書発送や受領には、紙やインク、郵送物の処理にかかるコストが必要となります。
しかし、インボイス制度を使えば、これらのコストを大幅に削減することができます。
また、環境負荷の削減にもつながり、SDGsなどに取り組む企業にとっては、重要なポイントの一つとなります。
4. 人的リソースの最適化
従来の紙媒体の請求書には、送信、受領、データ入力、確認などのプロセスが必要です。
しかしながら、インボイス制度を使用すれば、これらのプロセスを電子システムで行うことができ、重労働や慢性的な作業ストレス(RPA Robotic Process Automation)を抑えることができます。
さらに、データの統計処理も容易になるため、労働負荷の軽減や人的リソースの最適化につながります。
利用方法
インボイス制度を利用するには、インターネットに接続できるPCやスマートフォン、タブレットなどで、請求書専用のアプリやWEBページにアクセスする必要があります。
その際には、オンライン上での登録が必要となります。
また、電子契約、電子署名に関する法的な手続きが必要となる場合もあります。
インボイス制度を利用するうえでの具体的な手順は以下の通りです。
① クラウド上の請求書発行サービスに登録する。
② 登録に必要な情報(企業名、住所、支払方法など)を入力する。
③ 請求書のフォーマットを選び、請求書に必要な情報(請求先名、請求金額、商品名、数量、納期など)を入力する。
④ 請求書の発行をクリックし、支払い先メールアドレスへ請求書を送信する。
⑤ 支払い先がこの請求書を確認し、電子データで送信された請求書に対して電子署名を行い、受領する。この受領データはオンライン上で管理され、必要時に閲覧することができる。
以上が、インボイス制度を利用する一般的な例ですが、具体的な手順はサービスによって異なります。
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インボイス制度の注意点
インボイス制度を利用するにあたり、注意しておくべき点があります。
以下に、代表的な注意点を紹介します。
1. 電子署名法に基づき行う
インボイス制度は、電子署名法に基づいて行われます。
つまり、相手が受領したデータに電子署名を付けることで、受領を確認することになるのです。
そのため、電子署名に関する手続きや法的なルールを理解し、運用する必要があることに留意しましょう。
2.非常時の措置を検討する
インボイス制度は、主にインターネット上でやりとりを行うため、通信障害やシステム障害などの非常時に備えて、措置を検討する必要があります。
例えば、電子署名の正当性を証明するためには、公的機関が発行する認証書が必要となる場合があるため、災害に備えて紙媒体の管理にも対応する必要があるかもしれません。
3. 相手先の対応状況を確認する
インボイス制度を利用する場合、相手企業がシステムに対応していない場合や、電子署名を受諾できない場合があります。
そのため、相手先の対応状況を確認し、十分な説明と指導を行うことが必要です。
4. 保存期間を考慮する
インボイス制度においては、受領データの保存が重要なポイントです。
法的に義務付けられた保存期間を考慮し、適切な形でデータを保管することが重要です。
以上が、注意点の代表的な例ですが、それぞれの企業に合わせた具体的な注意点は、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。
インボイス制度は、時間やコストの削減、労働負担の軽減、環境への負荷軽減など、多くのメリットがあります。 しかし、システムや法的な手続きについて理解しておくことが必要であり、また、相手企業の対応状況や保存期間も考慮する必要があります。 特に、災害時などの非常時に備えて措置を準備することも大切です。 適切な対応と管理によって、インボイス制度の利用は、ビジネスにおいて大きな支援となることでしょう。